放射性物質の生物濃縮についていろいろ調べましたが、学者によって意見が分かれているのが現状です。政府の御用学者と思われる東大を中心とした学者は、生物濃縮はしないと主張している傾向が見られます。しかし、コロラド川での調査(広瀬隆氏の著書で紹介されている)のデータによれば、明らかに生物濃縮が起きていることがわかっています。
私は、放射性物質は生物濃縮をするという立場をとっています。生物が、外界から摂り込んだ物質を、環境中あるいは他の生物中の濃度よりも高い濃度で体内に蓄積することを生物濃縮といいます。特に生物にとって生活にそれほど必要でない元素・物質の濃縮は、生態学的に異常な状態であり、環境問題の一つといえます。
子供に多発している甲状腺がんについて山本太郎氏の国会質問をご覧ください。政府は放射線による低線量被ばくの害はない、という立場を以前からとっていることがわかります。
海外メディアの方が真実を好評しています。欧州放射線防護委員会のクリストファー・バスビー博士のコメントには説得力があります。
通常、生物体内に取り込まれた物質の多くは、代謝などによって再び体外に排泄されます。しかし、水に溶けにくい、脂質と結びつきやすいなどの性質を持つ一部の物質は、生物体内に蓄積しやすく、生物同士の食物連鎖によって生物濃縮が進行します。例えば、水域の生態系では、水中に残留している有害物質(PCB、DDTなど)が、植物プランクトンや藻類から、小型の二枚貝や魚類へと、濃縮率を高めながら濃縮されている事例が報告されています。(「奪われし未来」参照)
生物濃縮では、食物連鎖の上位に位置する「高次消費者」ほど、高濃度(自然状態の数千倍から数千万倍)の濃縮がおっこり、その生物の許容限度を超えた摂取量となって健康被害が発生する可能性が高くなります。実際に、生物濃縮により人間の健康被害が生じた事例としては、有機水銀中毒による水俣病などが知られています。
私は、人体に有害な物質がどこに蓄積するかを調べてきましたが、「内部被ばくから家族を守る食事法」の中で、それが脂肪細胞であると主張しています。科学的論文ではないので、科学的に細かな説明を省いてきましたが、これは細胞膜を形成する主成分であるリン脂質であると判断しています。リン脂質は体内で脂肪が運搬・貯蔵される際にたんぱく質を結びつける役割をし、情報伝達にも関わっていることがわかっています。
リン脂質には水になじむ性質である親水性の部分と水をはじき脂となじむ性質のある疎水性の部分の両方を持ち、これを両親媒性といいます。ドレッシングなどは時間がたつと水と油に分かれて使うときによく振らないといけませんが、リン脂質が含まれるマヨネーズは常に水と油が層になることなく混合しています。リン脂質には水と油をなじませる界面活性の働きがあるので、それぞれが分離することなく混ざり合うのです。このような働きを乳化作用といいます。
リン脂質は細胞膜の他、脳細胞(脳髄)、神経細胞、骨細胞(骨髄)、乳腺細胞に多く含まれています。リン脂質が変化してコレステロールとなり、これが胆汁酸、ステロイドホルモン、ビタミンDなどの原料(前駆体)となるのため、肝臓や脳、脊髄、生殖器など、ホルモン分泌に関わる部位に多く存在しています。
リン脂質は親水基(頭部)と疎水基(尾部)があり、体液中では頭部が外側を向き、尾部が内側をむくという形で生体膜の二重層(脂質二重層)を形成しており、これが生体膜の基本構造になります。リン脂質分同士の結合はゆるいので、各リン脂質分子は脂質二重層の中を横方向に自由に移動することができ、さらに血漿中のリン脂質分子が脂質二重層に入り込んだり、逆に血漿中に抜け出ることも可能とされています。
ところが、このリン脂質分子の間にコレステロールが入り込むと分子が動ける自由度は低下し、膜は硬くなり柔軟性が弱くなります。そうなると細胞膜の正常な働きを保つことができなくなり、血管がかたくもろくなる動脈硬化の状態や血管にコレステロールがたまるなどといった生活習慣病になってしまいます。
放射性物質はリン脂質の界面活性効果により細胞膜内に付着し、リン脂質内に入り込んだコレステロールを酸化させることで、心筋梗塞や動脈硬化などのさまざまな問題を引き起こすと考えられます。また、脂質に蓄積した放射性物質は細胞膜を徐々にむしばみ、細胞膜に穴をあけ、最終的に遺伝子を破壊していきます。
このリン脂質の界面活性効果を応用したのが大手掃除会社の販売しているモップであり、これには石油系の油が使われています。本来は血液中の有用なミネラルやビタミンなどを吸着し、選択的に細胞内に取り込む働きをしているリン脂質が、放射性物質からもたらされる過剰な活性酸素で酸化し、電離作用で破壊されて、選択の余地なく細胞内に入りこむことが放射性物質の問題点と言えます。
生物濃縮のメカニズムはまだ解明されていませんが、私は、リン脂質のもつ界面活性作用によるものととらえています。いったん、細胞膜に入り込んだ有害物質は、細胞が代謝されるまで残留することになりますが、皮下脂肪や内臓脂肪、またリン脂質を多く含む脳細胞や脊髄、乳腺細胞では新陳代謝のスピードがきわめて緩やかなので、なかなか排出できず、如叙に細胞を酸化させることで、将来的にガンなどの腫瘍を作りだす確率が増えます。
赤血球の膜も、細胞と同じ脂質二重層になっていて、リン脂質とコレステロールで構成されていることがわかっています。ということは、赤血球にも界面活性作用があるということになります。体内に取り込まれたビタミンやミネラル、栄養成分は、赤血球の膜の乳化作用によって摂り込まれ、末端の細胞まで運ばれていきます。放射性物質が赤血球の膜に付着すると酸化させたり、破壊するのもこの膜の油分がもつ界面活性作用が問題であるといえます。
牛乳は牛の血液が変化したものであるので、リン脂質を多く含みます。生乳ならまださほど問題のないリン脂質が、高温殺菌によって酸化され悪玉コレステロールに変性し、これを人体が摂り込むことで、細胞膜の酸化が起こります。リン脂質に取り込まれた放射性物質やダイオキシンなどの有害物質が、このリン脂質の酸化に拍車をかけると考えられます。
今まで述べたことは、私の見解であり、科学的、医学的見地からは認められないと言われるかもしれませんが、常識が非常識となって覆された歴史はたくさんあります。いつか、脂肪への生物濃縮が正式に認められる日がくることを願っています。放射性物質の問題については、あまりにも文献が少なくて、きちんとした根拠を示すことができる申し訳ないと思いますが、今後の研究によって徐々にそのメカニズムが解き明かされると思います。
「家族を内部被ばくから守る食事法」 岡部賢二著 廣済堂出版より