19.栄養の宝庫「お豆さん」のパワー 食の効用ABC

19.栄養の宝庫「お豆さん」のパワー

栄養の宝庫「お豆さん」のパワー

大豆の働き


 大豆は「畑の肉」といわれ、栄養分に富んでいるため味噌や醤油、豆腐、納豆、高野豆腐、湯葉、豆乳などに加工されて食卓の脇役を固めてきました。肉もたんぱく質が豊富ですが、脂肪を多く含むため食べ過ぎると動脈硬化などの原因になります。大豆はその点、肉の7分の1のカロリーで同量のたんぱく質が摂れるため太る心配もありません。大豆のレシチンには体脂肪を燃やし、コレステロールを低下させる働きや、脳の神経伝達をするアセチルコリンをつくる働きがあります。
 また、大豆のサポニンには体内にできるサビ(過酸化脂質)の発生を防ぎ、活性酸素を消す働きもあります。ダイエットはもちろん、ボケや生活習慣病の予防に役立つわけです。海藻との相性がよいのでひじきや昆布と炊き合わせると良いでしょう。海藻の鉄分は消化がよくないのですが、大豆に多い銅が鉄分の吸収力を高めることがわかっています。さらに、海藻のカルシウムも大豆や揚げのたんぱく質と合わさることで吸収がよくなります。


今注目の大豆イソフラボン


 大豆に含まれる苦みの成分のイソフラボンが注目されています。大豆イソフラボンは女性ホルモンに似た働き(植物性エストロゲン)をし、ホルモン作用のバランスを保つことによって、乳がんや前立腺がんを防ぐといわれています。
さらに、女性ホルモンの減少からくる更年期障害の症状を和らげたり、中高年以降に起こる骨粗しょう症を予防する機能をもっていることが、医学的な研究で報告されています。
 大豆に含まれるイソフラボンの量は、1グラム中、2~ミリグラムですが、北海道など北陸産の大豆には、通常の大豆の2倍以上のイソフラボンが含まれています。寒さに耐えてゆっくり育つものは陽性といって、より力強くなります。


小豆の働き


 小豆は数ある豆類のなかでいちばん陽性とされ、小豆ご飯は毎月1日と15日に食されてきま した。

また、1月15日は小正月、女正月ともいわれ、小豆がゆを食べる習慣がありました。これも漢方で赤小豆と呼ばれる小豆の薬効を体験的に知っていたからでしょう。とくに小豆は腎臓機能を高め、腎臓病の治療に大変効果があるとされています。

 

 腎臓には「解毒排膿」といって体の中の汚いものを尿として出す働きがありますが、小豆は尿の出を良くしてむくみを取ってくれます。
 これは小豆のビタミンCの働きです。かんきつ類のビタミンCは体を冷やすカリウムが多く、冷えに弱い腎臓に負担をかけますが、小豆の場合は体を温めてくれます。また、果物や緑茶や柿茶のビタミンCが熱や酸素に弱いのに対して、小豆の場合、体の中に入ってからビタミンCに変化するので100パーセント有効に働きます。腎臓はこのビタミンCで活発に働きます。


 さらに小豆には「清熱利湿」(熱を冷まし、体にたまっている湿気を尿として体の外に出す)という働きがあり、アトピー特有の湿(ジクジク)と熱(赤い発疹)がからみ合っている症状に特効があります。小豆と南京の炊き合わせは糖尿病の特効薬ですがアレルギーをもつお子さんにもぜひ食べさせたい料理のひとつです。小豆と昆布の炊き合わせは、便秘や高血圧に威力を発揮します。これは小豆のビタミンB1やサポニン、鉄分、食物繊維の働きによるものです。
 寒い北海道などでできる小粒の小豆ほど薬効が高まります。ただし、白砂糖などの甘みをいれるとせっかくの薬効が落ちてしまうので、小豆本来の自然な甘さを活かして調理してください。


黒豆の働き


 お正月料理に欠かせないのが黒豆です。「今年も1年マメで達者に暮らせますように」と願いをこめて、新年に黒豆を食べたと言われています。日本では黒豆は喘息の妙薬として知られていますが、漢方の本場・中国では黒豆の種皮は黒豆衣とよばれ、「腎・肝の働きを強化する」薬に分類され、ホルモンのバランスを整える働きがあるとされ、婦人科系の病気や頭痛、めまいに効くといわれています。
 これは黒豆に含まれるイソフラボンや大豆と同じサポニンやレシチンの働きと思われます。また、黒豆の黒い色はアントシアニンという抗酸化色素で、視力低下を防ぐ働きが注目されています。
 黒豆のなかでも丹波の黒豆は大粒で栄養価が高く、高級品ですが、黒豆が土地の栄養を吸い取ってしまうので、5年に1度しか植えられないといいます。それだけ大地の養分がたっぷり詰まって粒が大きくなるのです