18.おひさまと大地の恵み 切り干し大根 食の効用ABC

18.おひさまと大地の恵み 切り干し大根

おひさまと大地の恵み 切り干し大根

大地のエネルギーをたっぷり吸収してできた大根に、太陽の光と熱のエネルギーを加えて干し上げたのが切干大根です。秋に収穫した大地の恵みいっぱいの大根を細く切って冬の日差しと冷たい風で乾燥させます。
 全国の生産高の約9割を占めるのが宮崎県で、手作業で切り干し大根の生産が行われています。宮崎は火山灰地が多く、大根栽培に適しています。
 いい切り干し大根をつくるには、日照時間の長いことが条件です。また、空気が乾燥していて、大根が凍るか凍らないかという気温が保たれることが必要だそうです。その点、冬の宮崎は晴天に恵まれることが多く、九州山地からは冷たい風が「霧島おろし」となって吹きつけるので、切り干し大根には最適の風土になります。


食物繊維の王様・切り干し大根


 食物繊維が大量に含まれるのが切り干し大根の特徴ですが、干すことで生の大根に少ないリグニンなどの不溶性食物繊維が急激に増加します。この不溶性食物繊維は生大根に比べてなんと21倍にも増えています。また、水溶性の食物繊維も約9倍の増加ですから、切り干し大根はまさに腸のすばらしい掃除役といえます。
 このリグニンは材木などの堅い組織に多く含まれ、本来野菜には少ないのですが、ゴボウや大根などの野菜を刻んで放置すると、格段に増加するおもしろい性質があります。


コレステロールの掃除役


 姫路工業大学の辻啓介教授の研究によると、リグニンは食物の細胞壁を構成 する成分のひとつで、細胞と細胞をくっつける、いわば鉄筋をつなぐコンクリートの役割をしています。リグニンの注目すべき働きは、胆汁の主成分でコレステ ロールが原料である胆汁酸を吸着し、体外に排泄する点にあります。胆汁酸が排泄されるにつれコレステロールも減少してきます。生活習慣病で問題となるのが LDLという悪玉コレステロールですが、これをリグニンが減らすことで、脂肪肝や肥満をはじめ動脈硬化やそれに伴う心筋梗塞・脳梗塞などの血管がもろくな る病気も予防できるのです。


大腸がんの予防と有害物質の排出


 不溶性の食物繊維は大腸がんの予防になります。なぜなら、不溶性食物繊維は、大腸内の環境をよくするからです。腸内には善玉菌と悪玉菌が絶えず勢力争いをしているわけですが、善玉菌が優勢のときが健康な状態です。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は食物繊維が最良の栄養源となります。
 したがって、食物繊維が大腸まで届けば善玉菌が元気になります。切り干し大根に多く含まれるリグニンは不溶性の食物繊維で、消化酵素の分解や、腸内細菌の発酵による影響を受けません。そのため腸内の善玉菌を活性化して、便のかさを増し、腸に直接刺激を与えて便秘を解消してくれます。
 厚生省では、1日の食物繊維の摂取目標を20~25ミリグラムとしています。切り干し大根10グラム中には20.3グラムと摂取目標の1000倍にあたる量が含まれています。この食物繊維は水分を吸って7~10倍にもなるため、便の量が増え、がんをもたらす有害物質を薄めてしまします。また、切り干し大根にとくに多いビタミンB群も腸内環境をよくしてくれます。したがって、近年増加傾向にある日本人の大腸がんの予防につながるわけです。


カルシウムにすぐれた供給食


 切り干し大根のように干したものはカルシウムや鉄、食物繊維の量が格段に多くなります。切り干し大根100グラム中に含まれるカルシウムは470ミリグラム と牛乳の4倍以上です。また、1本1本にさんさんと日光を浴びた切り干し大根には、太陽のエネルギーが濃縮しています。そのためカルシウムの吸収をよくするビタミンDも多く、切り干し大根はまさに「野菜のイリコ」といえるでしょう。


胃腸の強化食


 生の大根には、でんぷんやたんぱく質・脂肪の消化を促し、胃腸薬にも使われるジアスターゼが多く含まれますが、切り干し大根にも残っています。また、胃腸を強くする食物繊維やビタミン類、ナイアシンなどもほかの野菜に比べると群を抜いています。この切り干し大根に消化吸収力が抜群の高野豆腐を加えて炊き合わせたおかずは、大根の甘みが高野豆腐とよくなじみ、胃腸の弱い子どもやお年寄りに最適の胃腸強化食になります。

 さらに、生の大根は水分が多く、体を冷やしますが、おひさまの恵みを受けた切り干し大根は水分がとんでエネルギーがアップしているため、冷え症の女性には生の大根サラダではなく、切り干し大根のサラダの方がおすすめです。12月から2月にかけてが新物の季節で、畑で干したての切り干し大根が手に入ります。いろいろな料理に工夫して使ってください。