24.飲む民間薬 三年番茶 食の効用ABC

24.飲む民間薬 三年番茶

飲む民間薬 三年番茶

 

 三という数字は熟成されていて円熟味をだす数字です。人間は、三日から一週間でリンパ液が、三カ月で血液が、三年で細胞が入れ替わると言われています。何ごとも三年修行するとひとつひとつの細胞の遺伝子に情報が組み込まれ、体が自然に覚えるので「石の上にも三年」ということわざが生まれたのでしょう。
 味噌も三年熟成すると動物性たんぱく質に近いようなうまみのある陽性な味噌に変化します。これが三年味噌と呼ばれる八丁味噌です。また、醤油でも三年でコクがでてくると言われています。お茶も三年置くとうまみがでてくるので三年番茶という名前がついたのでしょう。


三年番茶の由来
 昔、ある村で中国から渡来した僧が、村人のために寒中、野生の茶の木を伐採されました。太い枝のところはナタで割って、焙じたのち茶つぼに入れ、口を和紙でふさいで紐で結えました。

そして納屋や物置の上に三年以上放置し、順に煮出して使いました。これがいま正食家に広く愛飲されている三年番茶の由来だとされています。


 普通のお茶と違う点は、陰性で広がっている葉ではなくて陽性で締まっている茎だけを使い、さらに高温で焙煎することによってより陽性の性質を高めている点 です。したがって、陰性体質で胃腸が冷えている人や腸が緩んで便秘がちな人に、また心臓が弱って血液循環の悪い人におすすめです。

 三年番茶 のすばらしさは、その風味のよいことです。毎日飲み続けても飽きがきません。これは陽性な太い茎を高温で焙煎したときにできる独特のうまみ成分のおかげです。醤油や味噌が焦げたときのあの何ともいえない風味と似ています。カフェインがすくないので赤ちゃんの飲み物としても最適です。


カテキンの抗酸化力

 

 番茶の渋み成分はカテキンと呼ばれ、その抗酸化力が注目されています。このカテキンはビタミンEの20倍の抗酸化力をもっていることが岡山大学薬学部の奥 田拓男教授らの研究によって明らかにされました。お茶が抗がんや老化防止に非常にすぐれた働きをすることがわかったのです。
 また、昭和大学医学 部細菌学教室の島村忠勝教授の研究によると、お茶の中に含まれるカテキンがインフルエンザの感染力を瞬間的になくしてしまうことが明らかになりました。カ テキンにはウイルスが細胞内に潜り込むのを阻止する働きがあるので、お茶でうがいをすると、のどの粘膜についたインフルエンザウイルスも感染力を失い、カ ゼをひかずにすむというわけです。
 カテキンのこのような働きは、ワクチンでつくられる抗体の働きとよく似ており、カテキンは副作用のない「自然界の抗体」といえます。


抜群の解毒力


 番茶には殺菌、消臭、肌を整える働きがあり、最近では、お茶のカテキンを抽出してつくられた化粧品や染め物、住宅用の塗料まで出ています。
カテキンには殺菌効果があるので虫歯菌や歯周病の予防に効果的です。また、口臭の多くは、口の中に残った食べ物のカスが、微生物の働きによって発酵したり腐 敗したりするために起こります。番茶のカテキンはこの微生物の繁殖を抑えてくれます。また、腸の腐敗防止にも役立ちますので、体臭の強い人におすすめで す。

 川魚、青魚を調理するときに濃い番茶で煮ると、臭みが消えて骨も軟らかく煮ることができます。また、茶がらを布に入れて冷蔵庫の中に置けば、簡単な消 臭剤・殺菌剤にもなります。
 緑茶と違い、番茶はでんぷん質でガードされたビタミンC(プロビタミンC)なので、熱に強く、ぐつぐつ炊いても分解しません。百パーセント有効に働くビタミンC源として最適です。
ビタミンCはコラーゲンを活性化し、肌にみずみずしさと弾力を与えてくれます。アルカリ飲料でもあるので、体の内側から美肌効果が期待できます。


心臓の強化


 中医学の陰陽五行説では心臓・小腸系には苦みのある赤い食品が食薬とされています。その点、番茶は苦みと赤みをもっていて、心臓病の薬として期待できます。実際、渋いものを口に入れると口がきゅっと締まるように、番茶のカテキンには強い収れん作用があり、収縮力の弱い心臓を緩めて活性化してくれます。したがって、動悸がしたり、血液循環が悪い人におすすめです。このときには、30~40分ぐらいとろ火でゆっくり煮出した渋めの番茶を使います。この番茶に赤い梅干しと、少しの苦みと赤みのある醤油を入れた梅醤番茶はまさに心臓病の妙薬です。

 また、心臓・小腸系は意識、思考、睡眠とかかわっており、お茶を飲むと脳の働きが高まって思考、判断、創造、記憶などの知能活性化に役立つといわれているのは、お茶の苦み成分が心臓・小腸系を高めるためと理解できます。ボケ防止や不眠症の人に、またやる気がでない人にも番茶がおすすめです。