日本人の長寿の秘密 味噌
おふくろの味・味噌汁
ごはん、味噌汁、漬物といえば、日本の食事の御三家です。約千三百年前に中国から伝来したとされる味噌は、日本人の食生活に欠かせない発酵調味料で、手前味噌という言葉があるように、以前は家庭で手作りするのが普通でした。おふくろの味はこの郷土色の強い味噌からきたといえるでしょう。
優れたたんぱく源・味噌
味噌はまた、日本人の食生活で、たんぱく質を補う大切な役割を果たしてきました。カリウムの多い陰性な大豆をよく煮て陽性化し、塩のナトリウムの陽性と、時間や重しの陽性を加えて、肉や卵、牛乳に近い食品に加工したのが味噌です。しかも麹を加えることによって乳酸菌や酵母といった約160種の微生物が働き、たんぱく質をアミノ酸に分解するので、大変消化吸収のよいたんぱく源となります。たとえば大豆のたんぱく質の吸収率は80パーセントくらいですが、味噌になると100パーセント吸収されます。そして肉の7分の1のカロリーで同量のたんぱく質が摂取できるのも味噌の特徴です。主食である米には、必須アミノ酸のリジンの含有が少ないのですが、「畑の肉」といわれるほど必須アミノ酸の多い大豆が原料の味噌にはリジンが豊富に含まれるので、ごはんに味噌汁は必須アミノ酸の摂取源として抜群の組み合わせとなります。
老化防止に効く大豆発酵食品パワー
また、大豆がもつ豊富なビタミンやミネラル、食物繊維といったさまざまな栄養素が味噌の中にも生きています。醤油と違い、味噌の場合は大豆の皮も使うため、皮に含まれるサポニンやリノール酸が血管を軟らかくし、高血圧や心臓病、動脈硬化を予防してくれま す。さらにビタミンEやレシチン、褐色色素のメラノイジンにはすぐれた抗酸化作用があり、老化やがんの原因といわれる過酸化脂質を抑えてくれます。大豆の
芽に含まれるイソフラボンもかなり優れもので、女性ホルモンに似た働きをもち、更年期障害特有の、のぼせの症状を和らげたり、中高年以降に起きる骨粗しょう症を予防する機能があることが、東北大学の大久保一良教授によって報告されています。欧米人に比べ乳がんや大腸がん、前立腺がんが日本人にまだ少ないの は味噌に代表される大豆製品の恩恵といえるでしょう。
頭脳強化食・味噌
味噌にはかなりの量のブドウ糖が含まれてお り、迅速にエネルギーに変えます。朝はすべての細胞が空腹状態なので、朝一杯の味噌汁は陽性な味噌の成分が胃腸を刺激し、ぜん動運動を高めるため胃腸が目覚め ます。また、細胞に強力に吸収されてエネルギーに変わるので、活力がみなぎります。味噌には、脳細胞の活性化に役立つグルタミン酸や神経伝達に欠かせない
アセチルコリンの原料となるレシチン、脳の栄養となるブドウ糖を完全燃焼させクリーンなエネルギーをつくるビタミンB群、脳細胞の酸化を防ぐビタミンEなどが多く、総合的に脳を活性化してくれます。したがって、認知症の予防にも効果が期待できます。
味噌の解毒作用
味噌の中には メソオニンというアミノ酸があり、強肝作用があるといわれています。昔、キセルに味噌汁を通して掃除していたことから、「タバコのヤニ(ニコチン)は、味噌汁を飲めば消える」といった言い伝えがあったと考えられます。このことから、味噌汁はタバコ好きの方の薬といえます。また、お酒を飲んだあとの味噌汁の味は格別ですが、これはアルコー
ルが酸化して生じるアルデヒドという酒毒を味噌が分解してくれるからです。とくにしじみの味噌汁はより強肝作用が高まります。
味噌は医者いらず
国立がんセンター研究所の故・平山雄博士の研究で、味噌汁を毎日飲む人は、飲まない人に比べて胃がんの発生率が低いという結果が発表されて話題になりまし た。また、味噌に乳がんの発生を抑える働きがあることも明らかにされています。さらに、味噌の微生物は腸内の有害菌の増殖を抑えて免疫機能を高めるなど、
胃腸の活性化にも役立ちます。味噌も身土不二でその土地の味噌が体によいわけですが、原材料にこだわった添加物のない伝統的製法の味噌をぜひ選んでください。