3.食べる造血剤・鯉こく 食の効用ABC

鯉こく

食べる造血剤・鯉こく

 マクロビオティックで、体の弱った時の手当てに使う食薬が鯉こくです。これは、鯉のニガ玉だけを取り除いて、ウロコから内臓、骨まで鯉のすべてを一物全体で料理しています。鯉の3倍の量のごぼうのささがきと八丁味噌を合わせて、8時間くらい火を加えて煮込みます。そうしてウロコもタンパクも骨もすべてが溶けて、鯉の生命力が濃縮した濃厚な活力スープができます。


 鯉のぼりに象徴されるように、天然の鯉の生命力は非常に強く、生きたままさばくと、その切り身はしばらく動いていることがあります。鯉は、海の中を勢いよく泳ぐ陽性なマグロやサバと違い、淡水の中で静かに泳ぐ陰性な性質があり、動物性タンパク(陽)の中では最も植物性(陰)に近く、寿命も長いのです。ごぼうは野菜(陰)の中では陽性で、煮しめるほどに動物性(陽)に近くなる性質があります。陽中の陰の性質を持つ鯉と陰中の陽の性質を持つごぼうが陰陽調和して、しかもゴボウのアク気(ミネラル)により鯉の固いタンパク質が分解されて、非常に消化吸収力のよい食べ物に生まれ変わります。


 さらに、三年間熟成した豆100%の八丁味噌は、動物性タンパク並みの陽性なエネルギーを持っています。大豆が原料の八丁味噌にはレシチンやサポ ニンが大量に含まれるので、一緒に煮込むことでさらに鯉のタンパク質や脂肪が分解され、分子が小さくなり、胃腸での吸収力が格段に増して、身体に活力を与 えてくれます。


 鯉こくは、玄米食をして痩せ過ぎてしまったという場合や、糖尿病やガン、結核などでやせ衰えてきたときに食べると 胃腸が温まり、造血力を増して体力がつきます。悪性貧血や虚弱体質、産後の肥立ちが悪い時、お乳の分泌が悪い時などに用いると食薬になります。鯉こくは鯉やごぼうの生命力に八丁味噌と火のエネルギーが溶け合った高エネルギー食(生命エネルギーの不足を補う食)で、いわば食べる造血剤といえます。