味の芸術品 かつおぶし
日本料理は、「だしが決め手」と言われますが、そのだしの中心となるのがかつおぶしです。
かつおの切り身を煮てから、カシ・ナラなどの堅木で20日間いぶし、さらにかびつけと天日干しを繰り返して約半年すると、香りと旨味の王様、本枯れ節ができ上がります。「生き腐れ」と言われる肉厚で腐りやすい生魚のかつおを、芳香に満ちた半永久的な保存食に変えてしまった日本人の知恵には驚かされます。
戦国時代には、かつおぶしは、疲労回復、イライラや緊張を防ぐ野戦の携行食として非常に重視されていました。かつおぶしには消化吸収のよいタンパ ク質が80%近く含まれ、脳の神経伝達に欠かせないアミノ酸、疲労回復に役立つビタミンB1も豊富に含まれています。さらにかつおぶしには精神安定効果の
高いカルシウムやビタミンDも多いため、脳の疲れを取る活脳食品と言えます。動物性食品ではありますが、優良かびにより、余分な油は分解され、タンパク質 もアミノ酸にまで分解されて、かつおぶし独特の旨味成分であるイノシン酸に変わっているので安心です。
かつおぶしに含まれるアミノ酸は30種類で、人体に必用な栄養素、8種類の必須アミノ酸をすべて含んでいます。かつおぶしのだし汁を飲んだ時の奥深い味わいは、これらのアミノ酸の相乗効果のなせる技なです。
かつおぶしはかつおの切り身を煮て、燻乾しただけの荒節と、荒節にかびをつけて、熟成させた本枯れ節に分けられます。一回のかびつけにかかる日数は約2週間で、そのあと天日干しします。この作業を5回まで行ったものが本枯れ節です。かびつけの作業が終わるまで4カ月もかかります。このかびの働きにより節の内部の水分が抜け、保存性が格段に高まります。また、かびの脂肪分解酵素が酸化の原因となる悪玉脂肪を分解し、たんぱく分解酵素が旨味成分と芳香物質を生みだします。
燻乾食品であるとともに、発酵食品でもあるのが本来のかつおぶしです。日本人が生んだ味の芸術品かつおぶしを上手に食卓に入れて下さい。